同人誌情報

AmazonのKindleストアにて過去の同人誌や単行本未収録作品を期間限定で無料公開しています。この機会に是非。
ItamiWorks 同人誌 (22冊) Kindle版

2009年11月13日

『記憶の図書館』裏話

おはようございます。さぬいゆうです。
今回は『記憶の図書館』の話です。
これは2008年12月のコミックマーケット75で発表しました。


記憶の図書館の構造は、私の当初の案では表象世界の平地にズラッと本棚が無造作に置かれ、さらに床にまで本が山積しているのをネームで書いていました。でも読んだ方は知っての通り実際は別物になっています(公開されているサンプルでも確認できますが)。

実はこの変更は伊丹氏の案で、私も結構気に入っています。資料用にその塔のミニチュアを伊丹氏は作っていたのですが、それも頂いて私の手元に飾っています。

あ、でも、そういえば、これじゃあ記憶の図書「館」ではなくて、図書「塔」じゃないといけないのですかね?
う……、まだ突っ込まれていないから良しでいいと勝手に思っておきます。

登場人物の名付けは『紅茶が香る一つの閑話』同様に伊丹氏です。
裏設定としまして、大井田莉音は、『夢現の守り人』という未公開作品から引っ張ってきています。ボクっ娘って私はすごく好きなんですよ。いつか再登場させたいと思っていまして、つい、出してしまいました。

莉音は夢守という生業をしていて表象世界に干渉できる能力があります。

だから最後、記憶の図書館に莉音がカレーを持ってこれるわけです。本が無くなっている理由も半分は莉音が使っているためだったり……。そんなの知らんがな!って感じですよね。す、すみませんっ。でもこれは話の流れ的に説明は不要と思って敢えて省きました。佳乃視点で進行しているのもあったので、その雰囲気を壊すのももったいないかなって。

『夢現の守り人』ではホットケーキしか作れなかった莉音が、今作では少し成長してカレーを作っています。
ただ佳乃は夢だと思って莉音の正体には気づいていませんが……。

次回は折りを見て『お姉ちゃんと一つ屋根の下』の裏話を載せたいと思います。

2009年10月8日

『紅茶が香る一つの閑話』裏話

どうも、さぬいゆうです。今回の制作話は約一年前の作品になります。

『紅茶が香る一つの閑話』

伊丹氏と共同で作品を作り始めて、10ヶ月ほど経ったある日、そういえばまだ一度も少年漫画っぽいのを描いていないということになって用意した作品です。

当初からウェブ漫画として無料で公開しようという予定でした。

元々は12Pの掌篇話で魔物とか変な眼とかそういうのは一切無い話で、紅茶のウンチクをひたすら喋るだけの話だったのですが、少年漫画化に当たり、それ系の 要素を詰め込んで――でも、ヒロインがパズル好きという設定は伊丹氏の案だったような。伊丹氏がパズルの本持っていたので……うろ覚えですが。

ただはっきり覚えているのは、妖孤の尻尾抜いて武器にしちゃうのは伊丹氏の仕業です。主人公の必殺技で悩んでいたところ、伊丹氏が尻尾抜いちゃえっとかいうので――でも結構気に入っています。クールなヒロインが恥ずかしがるのは良いものです。


恐れ多くも清少納言を出したのは、パズル好き→タングラムをよくやる→タングラムによく似た智慧の板は平安時代にはあった→清少納言!といった安易な結びつ きからです。しかも、清少納言は人と違った物の見方をしていた。じゃあ、あの変な眼を持っていたことにしよう!――と、まあ、こんな感じです。

この『紅茶が香る一つの閑話』は公開直後から多数のメールやコメントを頂き大変ありがたい限りの作品です。励みになりました。

次回は折りを見て『記憶の図書館』の制作話を載せたいと思います。

2009年9月24日

『無限階段の登り方』裏話

おはようございます。さぬいゆうです。
さて、今更感たっぷりですが

『無限階段の登り方』の制作話です。


いや~、これもう一年以上も前の話なんですよね。
これは2008年5月のコミティア84で出した新刊同人誌になります。ネームを書いたのは2008年3月でした。

この同人誌を読むときBGMを「赤い胃の頭ブルース」にして頂けるとありがたいです。

というのも、2008年1月からこの曲を主題歌にしているテレビドラマ「栞と紙魚子の怪奇事件簿」を、伊丹氏と見ているとき「ゆるーい怪奇物やりたいね~」という話になって、それでは!っと意気込んで書いた記憶があります。

実はここから制作体系が少し変わってセリフの写植も私がやっています。

完成したネームの不透明度を20%にして、セリフの写植をして伊丹氏に渡すといった段取りです。
制作体系は毎回試行錯誤して変えているのですが、この同人誌の制作で段取りの方向性が決まってきてます。

この『無限階段の登り方』21ページ最後のコマの少女が持っている本(世界怪奇百科譚)、あれの文章は当初、文章は書かずに『ーーーーー』みたいな感じで誤魔化す予定でしたが、伊丹氏が「それはダメだ。文章考えろ」といったきたので、そこがちょっと苦労しました。
漫画では吹き出しで隠れてたりしているのでこの機会に全文掲載。
無限階段とは
無限に連なる段からなる段状の物。 上に昇ろうが下に降ろうがそこに頂上はなくひたすら段が続く。 無限階段にはいくつか種類が確認されている。 なお、階段の概念、昇る降る以外のことをすれば無限階段から脱出することができる。しかし概念の外というのは、その無限階段の種類によって変わってくるも ので、また派生条件によっても多少の差異を生じることもある。

メビウス型
この無限階段は数学者アウグストが最初に発見した。帯状の長方形の片方の端を180°ひねり、他方の端に貼り合わせた形状の無限階段である。 メビウスの環階段とも言う。 ひねるという性質上、ユークリッド空間においては、ひねる方向(時計回りと反時計回り)により、右手系と左手系の2種が存在することになる。

ペンローズ型
数学者ペンローズの考案による回り階段の不可能形態。無限に上昇あるいは下降を繰り返す。 別名、無限回段とも言う。 昇っていたと思ったら降っていたり、また、降っていたと思ったら昇っていたりと、昇降無意の階段である。

ただし1/10000の確率で出現するペンローズ型は無限階段の不可能形態であるため、その脱出は困難を極める。その理由は昇っていたと思ったら降っていたり、降っていたと思ったら昇っていたりとする、いわゆる昇降無意にある。そこには階段の概念はすでに無く、段が連なっているだけの回段があるだけである。

この階段は数学者ペンローズが最初に提唱した。当初理論上の空察かと思われたが、1983年にその存在が確認された。
おかげさまでこの本は初出から一年と3ヶ月たったコミックマーケット76にて完売することができました。
毎回買ってくれる方には感謝のしっぱなしです。ありがとうございます。
次回は折りを見て『紅茶が香る一つの閑話』を載せたいと思います。

2009年7月3日

『メガネが紡ぐ青い糸』裏話

おはようございます。さぬいゆうです。
さて、今回は予告通り『メガネが紡ぐ青い糸』の制作話をしたいと思います。
この作品は2008年2月10日の同人誌即売会コミティアが初出の、そしてItamiWorksの初めての同人誌となります。

元々これは2007年の10月くらいにふいっと頭の中に思い浮かんだのをネタ帳に書き連ねたものです。
その時の仮題は『近視の少女と遠視の少年の話。』で、あらすじはこうでした。
校庭の水飲み場で少年と少女は顔を洗っている。
(体育の後? 二人とも眼鏡は蛇口のすぐ上の台に置いている)
サッカーボールが飛んできて眼鏡に命中。眼鏡は2つとも壊れる。
初期構想では少年と少女の話でした。それが紆余曲折あり、女の子同士にした方が良いんじゃないかなってことになって、あの話に落ち着きました。
この作品のネームを切り出したのは、伊丹氏が『豆腐にまつわる、ある少女の話。』の下書きが終わる頃だったと思います。


この作品はすごく厳しいスケジュールの中で敢行していて、私の務めであるネームは12月に終わっていたのですが、『豆腐にまつわる――』の完成が一月の初め までずれ込んだおかげで、表紙を1月に入ってから描き始め、本文作画を3週間くらいで作らなければならず、特に伊丹氏が苦労していたのを覚えています。

そしてこれはひっ迫していたからなのか、もしくは私の絵が下手だったからなのか16Pの一番右下のコマ――あれはネームでは井村だったのですが、相沢さんになってしまってます。

それとボールをぶつけられた相沢さんは、その後おでこにガーゼをした状態で出るという設定などもありませんでした。

でも、すべて良い方向に変わったと思います。
特にガーゼをした相沢さん設定は、文字書きの私にはそういうビジュアル的な発想がなかったので下書きを見たとき、思わず感嘆を上げてしまいました。

おかげさまで、この作品は印刷所のねこのしっぽ様に綺麗に作っていただいたのもあってか、今現在で唯一の完売(絶版)同人誌になっています。
初めての同人誌にも関わらず、こんなに売れてびっくりしました。
買って頂いた方には感謝しきりっぱなしです。

さて、この作品の話はこれで終わりです。最後まで読んで頂いた方、ありがとうございます。
次は今度があれば折りを見て『無限階段の登り方』の制作話を載せたいと思います。

2009年4月12日

『豆腐にまつわる、ある少女の話』裏話

初めまして、さぬいゆうと申します。
主に伊丹澄一氏の漫画作品の原作を担当しています。

日誌と銘打っていますし、しかも私の名前も入っていて、折角なのでこれからはちょびちょびと日誌的ななにかを書いていきたいと思います。
――といっても、伊丹氏のような絵は描けないし、ここで本を披露しても伊丹氏の絵が無ければ魅力が出ないような話――つまり読むに値しない――しか書けませんので、ここは一つ、語りネタとして原作者から見た作品の思い出話を綴っていこうと思います。

『豆腐にまつわる、ある少女の話』今更ヒストリー

この作品を読んだ人は、高確率でこう言います。なぜに豆腐!?――と……!

えっと、実はこの作品、過去に私が書いた『宇宙人と絹豆腐』という未発表ネーム――ごく短い期間、このネームを小説にしてウェブサイトに公開していた時期はありましたが――が大元になっています。

ざっくりとあらすじを言うと、豆腐屋の店主が作る絹豆腐『絹やわめ』が好きな女子高生宇宙人が、お店に通うという話です。

実を言うとこの『宇宙人と絹豆腐』が初めてネームを切った作品でして、完成にはすごく時間が掛かり、その構成力もいま見ると赤面物ですが、気に入っている作品です。

そんな感じで『宇宙人と絹豆腐』は個人的に思い入れがありまして、良い感じに時が経ったある日、もう一回、豆腐にまつわる話を書きたいという思いが湧いてきました。それで、舞台をそのままに設定を考え、刀・制服・少女と羅列していくうちに出来たのが、2007年3月脱稿の『守人は最後に豆腐を食す』で32ページのネームでした。

これはなぜかすぐに作画に回すことなく、そのままHDDの奥底に眠った状態で数ヶ月経過しました。

それから少しエピソードを切り詰めて24ページにしたのが、同年10月脱稿の『豆腐にまつわる、ある少女の話』になります。

当初は私自身が絵を描く予定だったのが、紆余曲折あり――この辺りのエピソードはまたの機会に……――伊丹氏が作画をやることになりました。

これが二人の第一作作品になり、いまに続いています。

ちなみにこの漫画、勘のいい人は気づいているかと思いますが、二人とも作中で名前を一度も呼び合っていません。人物設定する際にも最初から少女と少年の名前はつけませんでした。

これは昨今のアニメや漫画で会話中に名前を呼ぶ場面――1対1でも!――が多々見られるのが個人的に不自然だな、と思っているのでわざと名前を廃して物語を進めてみました。

この漫画のあらすじに載っている『錦織ミサキ』というのは伊丹氏が後日名付けたものです。少年の方は相変わらず名無しさんですが、私達は豆腐小僧と呼んでいます。

なぜ、この少女は豆腐が好きなのか――これは敢えて提示しなくても、作中からなんとなく察してくれれば、ありがたいです。

一応ありますが作中ではっきり提示していないものをグダグダ言うのも云い訳がましいので……すみません。

ちなみに特に前半のスーパー内の背景は私が下書きをしたこともあってか、かなりクオリティが低いです……すみません。

この作品の話はこれで終わりです。最後まで読んで頂いた方、ありがとうございます。

今度があれば折りを見て、つぎは『メガネが紡ぐ青い糸』の制作話を載せたいと思います。